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「あの娘は僕に、告白してくれたんだ。」
……!?プロポーズ?どういうことだよそれ。
「驚きのあまり、返事が出来なかったんだ。でも、付き合うつもりでいた。その返事をしようとした矢先、あの娘は事故で……車に………」
アイツが泣き始めた。
ふざけるな。僕は彼女を本気で好きだと思ってたんだぞ。
思わず声を荒げる。彼は思わず驚いた顔で
「…………君も、悲しいんだね。」と、言った。
当たり前だ。彼女は……彼女は、僕の生き甲斐だったんだ。
「あの娘、青空が好きだったんだよ。」
そんなことは知っている。彼女は丁度今くらいの季節の空が好きなことも。もう彼女は、爽やかな春風を感じることも、舞い散る花びらを眺めることも出来ないんだ。
暫くの沈黙の後、アイツはなんと僕と踊り始めた。最初はぎこちなく、それでも確実に。
「僕もね、ピアニストなんだよ。」
そうだったのか。彼女と同じ仕事をしてたのか。
二人のダンスはどんどん早くなっていく。
一曲弾き終えた後、アイツは小さな声で呟いた。
「流石、あの娘の使っていたピアノだ。」
勿論だ。僕は優秀なピアノなんだから。
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