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彼女が大人になり、ピアニストとして脚光を浴びても二人の秘密は続いていた。
彼女はひたすら名を上げ続けていた。いくつものコンクールを勝ち抜き、その踊るようにピアノを弾く姿から「鍵盤の上の舞踏家」と呼ばれる程だった。
僕は、彼女が未だに僕を練習用のピアノとして使ってくれているのが嬉しかった。僕はピアノなりにも、彼女を愛していたのだ。
「弾いているだけなのに、隣にあの娘が居るような気がするな。……そうだ、いつか君にもあの娘の言っていた景色を見せてやりたいな。」
何だって？どういう風の吹き回しだ？
「あの娘が生きていたときに、お気に入りの場所を教えてもらっていたんだ。今度そこに君を連れていこうと思う。弾いてみて分かった。君はあの場所へ行くべきだ。」
そこから怒濤の日々が始まった。まず業者がやって来て、僕を解体しだした。僕は解体されなければ、この部屋のドアも、家の扉も通ることが出来ないのだ。そこで一旦意識も途切れた。揺れるトラックの感覚だけが、体に染み付いていた。
そんな少しの旅も終わり、僕は目を覚ました。目を開けるとそこには…
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