蒼天葬送曲

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そこには、青があった。見たこともない青の色が視界一杯に広がっている。強い風が吹いて足元の葉っぱや花びらが宙に舞う。見上げると、空はどこまでも、どこまでも続いていた。 そこは一面の花畑で、とてもよく晴れていた。体に当たる風の強さに、思わず顔を背けそうになった。 「今日は春一番だって、天気予報で言ってたからね。」 アイツが隣でそう言う。 ここが彼女が見たかった景色。外の世界とは、ここまで美しかったのか。アイツが 「天国にいるあの娘に、届くといいんだけどな。」 と言いながら椅子に座った。きっと届けられるさ。僕の音ならね。 アイツは最初に、ゆっくりと弾きだした。静かな曲調の落ち着いた音楽。その曲は、高音ながらしっかりとした力を持っていてまるで生き物のように躍動していた。 一曲弾き終わった後、突然どうっと風が吹いてきた。僕らを包み込むような優しい、しかし力強い風が。 「あの娘が喜んでるみたいだ。」 アイツが笑いながらそう言う。きっとそうだよ。しっかりと天まで届いてる。
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