第1章 始まり

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こちらのカードは現在使うことが出来ません 「え?マジで…」 要は家から歩いて徒歩五分のATMで青ざめていた。 「嘘だろ、そんなことないよな」 そこがついた口座に、親にお菓子をせがむ子供のようにしつこく貸し出しをしようとATMの前で、現実と戦っていると。 「ゴッホン!」 「ん…?おわっ!」 振り返れば要の後ろには人気料理店並みの長蛇の列が出来ており。 先頭にいるおばちゃんはイライラを募らせながら咳払いアピールをしていた。 「えー、あー、す、すいませーん…」 いたたまれない空気を感じ、その場をすごすごと立ち去り入り口へと向かう。 「はぁー、終わった」 どんよりと瘴気のようなため息をつきながら、要はこの世の終わりを悟った。 気づけば一文無しで、働こうにも生まれつきの顔の悪さで受ける面接は全て不合格。 その数約50社、目元をキリッとさせると面接もイケる!という、ありがたい先輩の助言を律儀に守っているせいでもある。 おまけに深刻な現代病でもある引きこもり症候群に侵されており、その弊害によってコミュニケーション障害も併発しているおかげで、初対面の人とは1分も話せないのだ。 結局、お金も降ろせずにずりずりと帰路についている。 要がいつも捨てるゴミ捨て場まで差し掛かり ふと見る、とキラリと光るものが目に見えた。 「これは、まさか?」 光り物に群がるカラスのように、瞬時に手に取るとそれは。 「スマホか?」 OS機器搭載のスマートフォン略してスマホ、なぜスマフォではないのかは謎。 遠く離れたところでも会話が出来その利便性から老若男女問わず持ち歩いているのがスマホである。 だがしかしbat、塩を舐めて生活するほどの極貧生活を送っている要が持っているはずもなく。 「チラッ…チラッ…欲しい!ものすごく欲しい!」 物欲を抑えるのに必死になりながらもキョロキョロとあたりを見回す。 そして、さっとポケットに入れると競歩の選手ばりに早歩きでスタスタと帰路につく。 家に帰り、夕飯の準備を始める。 コップに水道水を入れるため、キュッと蛇口を捻る音がする。 だが水が出ない、 (ついに止まったか) 先日までは3滴ほど水が出ていたので、なんとか喉は潤せていた。 小皿に塩を盛り、完成。 ぱっと見は部屋の隅に置いてある、魔除けの盛り塩であるが、これが要の夕飯だ。 ひとつまみ舐め。 (うむ、しょっぱい) 蛇口を捻るがやはり水は出ない。 夕飯終了。
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