始まり

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―集落の長の血を引く子供を齢十五の時に【鬼】へ嫁入りさせる― あやめが生まれて間もない事から、両親に言い聞かされてきた話だった。鬼に嫁入りさせれば、集落を襲わないと【鬼】が要求を付けてきた。その要求を飲むしか生き残る術は無かったのだ。鬼に嫁入りというのは名ばかりで、【生贄】として差し出すと同義に等しかった。あやめには十歳ほど年の離れた姉がいた。鬼へ嫁入りすると決められた姉は、家の地下にある座敷牢にいつもいた。あやめも姉の所へ遊びに行っては、姉は穏やかな笑顔で、あやめの頭を優しく撫でてくれるので好きだった。姉もあやめと同じく、右目が無く白い包帯でいつも巻かれていた。けれど「姉の所へあまり遊びに行くな」と両親に怖い顔で止められたのだった。幼い頃のあやめは、どうして姉が座敷牢で育てられているのか、どうして姉と毎日、会ってはいけないのか、理解出来なかった。太陽が眩しい大地で、姉と一緒に外へ遊べなくて、残念だと思った。室内で姉とお話をしたり、室内で出来る遊びをしていた。
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