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夢の終わり
あやめは現の世界と夢の世界を交互に行き来する。現の世界では、座敷牢の中で金糸雀と共に、琥珀と瑠璃の来訪を心待ちにした。夢の世界では、鮮やかに咲き誇る桃の花が咲く桃園の湖で、金糸雀と共にあやめはやって来ては、琥珀と瑠璃に出会ったのだった。
「あやめ。最近、元気が無いようだが…?」
「ううん、何でもないよ。琥珀」
心配そうな表情を浮かべた琥珀に対して、あやめは首を横に振って穏やかな笑みを浮かべるのだった。あやめの肩に乗っていた金糸雀も、ぴぃと小さな声で鳴いては首に擦り寄って、心配している様子だった。今日も桃の花を水に満たした杯の上に浮かべて、夢の世界へとあやめは金糸雀と共にやって来ていたのだった。琥珀とあやめは、ひんやりと心地よい温度の湖に足を浸らせながら、綺麗に咲き誇る桃の花をじっくりと鑑賞していたのだった。桃の木から、ひらりひらりと舞い踊る薄紅色の花びらは、湖へと落ちていき水面に、ぷかぷかと浮かぶのだった。
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