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小鳥の鳴き声が聞こえてくる朝。穏やかな太陽の光が、座敷牢の鉄格子の隙間から差し込んでくる。あやめは目を瞬きさせると、ゆっくりと体を起こした。傍に置いてあった紅い杯を見てみると、水に浮かびながら桃の花がぷかぷかと漂っていたのだった。あやめは、桃の花を両手ですくい取ると顔に近付けさせて、匂いを嗅いだのだった。ほんのりと甘い桃の香りがして、あやめの気分を落ち着けさせた。あやめは思いっきり深呼吸をしてから、穏やかで、綺麗な笑みを浮かべて桃の花に口付ける。
「素敵な夢を、ありがとう」
儚くとも、優しくて、温かくて、幸せ夢をありがとう。
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