らいかのそらの下。

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ゴシップ記事なんて書く記者は、モノ書きの底辺だ。 地元の新聞社に勤める親父殿にそう言われ、家を飛び出してもう四年になる。 もちろん私もそれを書きたくて記者になった訳じゃない。 本当になりたいのは小説家。 でもなれないんだから、食べて行くためにゴシップを書いている。 タブロイド紙の記者は記事も書けば写真も撮る。 いつの間にかこんな仕事が私の生活の中心になり、今日もネコと言われる情報屋から買ったネタで、張り込みをする事になった。 三流大学を出て出版社に就職した頃は、ファッション誌を見て服を買い、髪を束ねて仕事をしていた。 今じゃ、いかに動きやすいかを追求する服で、一日中ターゲットの家の前で張り付く事もある。 食事もそう。 オシャレなカフェで食事をしてインスタグラムに写真を上げる同世代のOLを横眼に見ながら、立ち食い蕎麦で五分で食事を済ませ、慌ててターゲットのマンションの前に戻る。 立ち食い蕎麦が食べれる時はまだ良い方で、コンビニのミニアンパンと缶コーヒーが主食になる時もある。 三十六回ローンで買った望遠レンズを揺らしながら、今日はターゲットのマンションの向かいのビルに登っていた。 最近はセキュリティもしっかりしていて、簡単に入れるビルも少なくなった。
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