第三章 薄荷

5/6
前へ
/374ページ
次へ
「何がおかしい」  才四郎のあからさまに不満な声に、私は口を押さえた。 「いえ。余りにもはっきりと言われたので。そうですね。そのように改めて言葉にされると、余りにもひどい仕打ちですね」 「他人事じゃないんだぞ」  私はなんだか心にかかった霞が晴れるような思いで、才四郎の言葉を聞いていた。私も人である以上、このような仕打ちに対して思うところがないとは言えない。だけれど私以外に、このわだかまりを分かってくれる者がいるだけで、あの薄荷の薬のように、すっと心がすいて、救われるような気持ちになる。 「才四郎。あなただけでも。そのように言ってくれる者がいてくれれば、それでいいのです」  私は続けた。 「私は五年もの間、衣食住不自由なく、匿っていただいた身です。本当は我を通さず、領主殿のされるがままに、なるべきだったのかもしれません。でも私はそうしなかった。ですからこのようになっても仕様がないのだと思います」 「さっきから仕様がないってなあ」     
/374ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加