第四章 龍笛(1)

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「あれ位なんとでもなる。俺が先に行く。やつらを引き付けた隙に前に進んでくれ。なにかあったら、これを鳴らせ」 小さい笛を渡される。私はうなずいて、それを受け取った。彼を見上げる。 「才四郎、くれぐれも、気をつけて」 才四郎は、そのまま親子の方へ駆けていく。いわれてみれば、私は才四郎の忍としての腕を見たことがなかった。私の暗殺の命を受けるくらいだから、それなりなのだろうけど。    彼が何か言いながら、荷車に近づいた。まだ得物は抜かない。才四郎がなにか挑発したのか、一人の男が斧を振りかざし突進した。それをひらりとかわし、組討で男をいなす。男が地面に崩れ落ちるのが見えた。よく見ると盗賊たちは、この辺りの農民崩れの、にわか野党団のようだ。彼にしてみれば、大したことないのだろう。私も護身術を少しかじってはいるが、彼の身のこなしの軽いこと。さすがと言わざるを得ない。そのうち、才四郎が道を外れて林の中に入る。後を追って、数えると十数人がかけていく。私は辺りの気配を伺い、移動して親子のそばの木陰に身を寄せた。     
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