「買ってもらえない」モノはない

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昔から、ずば抜けて可愛い女の子だった。 気づいたのは、おじさんがママに内緒で人形を買ってくれたとき。 え?身内だから甘いんじゃないかって? いくら身内でも、誕生日でもない幼稚園児に万のつくフランス人形買わないでしょう? ポイントは、上目遣い。目を合わせるのは、一瞬だけ。 「どうしたの?」と鼻の下を伸ばして訊いてきたら、こっちのモノ。 あとは欲しいものを指差せば、初対面のおじ様だって財布を出してくれる。 目が合わなければ、しゃがみ込んで気づいてもらえるまで粘ったり、ワイシャツの袖を軽く握ってみるのも効果的だった。 おかげさまで、お小遣いがピンチの時にも欲しいものが手に入る。休日につける化粧品も、クラスメイトよりランク高めのものが手に入る。 少々強引だが、使えるものは使えるうちに使っておかないと、それこそナントカの持ち腐れである。 そう言ってしまうと、なんだかイケナイことをしているように聞こえるのが不満だ。 私は、見た目は学業とスーパーのバイトに勤しむただの女子高生であり、実にただの女子高生なのだ。 おじ様たちとは1度のお買い物以上の関係しか持たない。連絡先はすぐにブロックし、何かを買ってもらった店舗を同じ時間帯で利用することはしない。 なんとも涙ぐましい努力! 前提としてバイト代とお小遣いが存在するので、最近はこの手段に講じることも少ない。 あくまでも、健全なお買い物の手段だと捉えて欲しい。 金欠の時にはバツグンの効力を持つ「おねだり」だが、唯一かつ最大の欠点は、同性ウケの悪さだろう。 中学入学直後にクラスメイトの女子に、「現場」を抑えられてしまった。その女子が「そこそこ可愛くて、勉強も運動もできる自信家タイプ」なのが、さらにいけない。勝ち気な彼女は、すぐに学年中に触れ回る。おかげで3年間も陰で「ブリ子」なんて、ナンセンスなあだ名で呼ばれてしまうことになった。こういう類いの悪口は、しっかり本人にも把握されているのでぜひ気をつけて欲しい。 まあ、彼女のおかげで堂々と「買い物」もできた。進級時に不名誉なあだ名をあえて使うことで担任の同情も買うことができたのも、事実ではある。
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