イケメン1人、お買い上げ。

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「わっ、きーちゃんだ」 褐色に焼けた肌色に、白ポロシャツが眩しい。 「380円になります」 アイス4本。外で同じ部活の子が待っているのかもしれない。 「バイト頑張ってね!」 部活の休憩時間なのはわかるけど、そんなに勢いよく走るとパンツ見えるよと言ってあげたい。 「ありがとうございました」 顔を上げたとき、パートのおばさん達が不思議そうにこちらを見ているのが面白かった。 学校での私は女子達とつるんでいるタイプで、男子と関わることの方が少ない。 これも私なりに学んだ処世術だ。 バイト先を通学先の町にしたのは、中学の関係者となるべく会いたくなかったのと、時折クラスの誰かに見つけてもらうため。「普通の高校生」アピールには欠かせない。 そうそう、帰省中の時期に来る大学生アルバイトも知らない人ばかりなので、気兼ねしなくてもいい。 「桃瀬(ももせ)くんが来てくれて助かるわあ」 蛍光灯を替える青年と、おばさん。これはもう、母子だ。 「この店舗は男性の方も多いので、力仕事とか安心ですよね」 明りがつくと、まばらに拍手が起こる。 「ウチの男どもはダメよ、すぐ見かけに騙されるし、いざって時に頼りにならないし」 意味ありげに視線を寄越されたのがわかった。 いつもなら「何も知りません」顔で微笑み返すのだが、今日はあえて無視を決め込む。 お前らだって「見かけに騙される頼りない男ども」と一緒なんだよ、バーカ。 「へえ、そうなんですか」 金髪が特徴的な、文化系・見た目下がってるけど実は優しい系イケメン。おまけに都内有名私大に通う優良物件クンは、最適かつ最も面倒な相槌を選択した。 「レジの木内(きうち)って子なんだけどね...」 昨年の夏は、女子大生を取り込んでいた。 おかげで、ロクに仕事もしない口先だけの立派な「後輩」に手を焼くことになったのだ。今年はドラッグストアで見かけたが、上手くやれているようには見えなかった。 思い出しただけでムシャクシャしてくる。 今日はストレス発散で、何か買ってもらおうかなあ。
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