2人が本棚に入れています
本棚に追加
「わっ、きーちゃんだ」
褐色に焼けた肌色に、白ポロシャツが眩しい。
「380円になります」
アイス4本。外で同じ部活の子が待っているのかもしれない。
「バイト頑張ってね!」
部活の休憩時間なのはわかるけど、そんなに勢いよく走るとパンツ見えるよと言ってあげたい。
「ありがとうございました」
顔を上げたとき、パートのおばさん達が不思議そうにこちらを見ているのが面白かった。
学校での私は女子達とつるんでいるタイプで、男子と関わることの方が少ない。
これも私なりに学んだ処世術だ。
バイト先を通学先の町にしたのは、中学の関係者となるべく会いたくなかったのと、時折クラスの誰かに見つけてもらうため。「普通の高校生」アピールには欠かせない。
そうそう、帰省中の時期に来る大学生アルバイトも知らない人ばかりなので、気兼ねしなくてもいい。
「桃瀬くんが来てくれて助かるわあ」
蛍光灯を替える青年と、おばさん。これはもう、母子だ。
「この店舗は男性の方も多いので、力仕事とか安心ですよね」
明りがつくと、まばらに拍手が起こる。
「ウチの男どもはダメよ、すぐ見かけに騙されるし、いざって時に頼りにならないし」
意味ありげに視線を寄越されたのがわかった。
いつもなら「何も知りません」顔で微笑み返すのだが、今日はあえて無視を決め込む。
お前らだって「見かけに騙される頼りない男ども」と一緒なんだよ、バーカ。
「へえ、そうなんですか」
金髪が特徴的な、文化系・見た目下がってるけど実は優しい系イケメン。おまけに都内有名私大に通う優良物件クンは、最適かつ最も面倒な相槌を選択した。
「レジの木内って子なんだけどね...」
昨年の夏は、女子大生を取り込んでいた。
おかげで、ロクに仕事もしない口先だけの立派な「後輩」に手を焼くことになったのだ。今年はドラッグストアで見かけたが、上手くやれているようには見えなかった。
思い出しただけでムシャクシャしてくる。
今日はストレス発散で、何か買ってもらおうかなあ。
最初のコメントを投稿しよう!