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あれから一カ月。
見張る人は毎日違う人に変わるが、相変わらず何も起きない。平和だ。
午前八時、あの人からメールが届いた。
「おはようございます。今日は浅井という人を見張ってください。よろしくお願いします。では」
浅井かぁ。
浅井は一緒にバイトを探してくれたあの友人だ。
あいつに限って、何もしないだろう。今日は一日ゆっくりできるな。
この仕事にももう慣れた。ケータイを見つつ、首を回すふりをしながら浅井を見張る。俺ってけっこう演技派になったかも!
そんな風に調子に乗りながらゆっくりしていたのだが、浅井の様子が少しおかしい。制服のポケットは、時間と共に膨らみだした。こいつまさか……。
とりあえず、よくよく観察してみることにした。なんだか、万引きGメンみたいだ。
「はい盗るよ~この子盗るよ~今から盗るよ~。はい入れたよ~。たぶんお札をポケットに入れたよ~。はい元に戻ったよ~。これちょっと行ってくるよ~……」
って、嘘だろ? まさか、あの浅井が?
仕事だから、捕まえたほうがいいよな。でも……友人を捕まえるなんてできない。でも……。
そうだ、『出来高』だ。『出来高』が貰えるんだ。給料が増える。給料が増える。給料が……。
気付いたら、自分の家だった。
あの人からのメールには、『ご協力ありがとうございました』とだけ書かれている。
どうやら、浅井は警察に連れていかれたようだ。
俺の手には、なぜか、一万円札が握りしめられていた。
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