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あれからしばらく経ったある日。
あの日以来、続々と小さな犯罪が起こり、多額の報酬が通帳をにぎわすようになっていた。
『浅井を捕まえてしまった』という罪悪感はもはや昔のもので、今はもう平気になっている。
ただ、ここ最近はあまり事件が起こらない。
事件が起こらないのはいいことだ。
ただ、俺はなぜか満足していなかった。
犯罪を見つけ、多額の報酬を握りしめるあの快感が忘れないままいた。
そんな状態でも、あの人からは決まってメールが来る。
『今日も剣辰屋で、眼鏡の高田という男を見張ってください。よろしくお願いします』
指示されたようにそこに向かい、指示されたように見張る。
それを閉店まで続けたが、やっぱり何も起こらない。
「今日は何もなしか」
やれやれという感じで剣辰屋を後にし、なんとなく後を振り返ったその瞬間。高田が裏口の扉を閉めて、店から出てくるのが確認できた。
そこで俺は思いついた。
“もしかしたら指定時間じゃなくても捕まえたら出来高がもらえるかも”
俺はこそこそと高田の後をつけることにした。
高田と同じ電車に乗り、高田と同じ駅で降りた。
住宅街に着いたころには、もう空は暗闇に包まれていた。
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