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チカチカしている電灯の死角を利用しながら高田の後をつけてゆく。
そうして着いて行った先には、小さな本屋だった。
高田は本屋の息子なのか? いや、手つきがおかしい。
高田の左手には、週刊誌が握られていた。
そして右手には、定規の様なもの。
目当ては……袋とじ……か?
だとしたら出来高がもらえる。
どんなに小さな犯罪でも、出来高がもらえるのだ。
これなら出来高が貰えるはずだ。
久々の快感を妄想して、電柱の陰から勢いよく飛び出した。
……はずだった。
俺の左手は誰かに掴まれて、その場にこけていた。
目の前にいるはずの高田の姿は、そこになかった。
「えっ? 誰だ? 誰だよ! 高田は? 高田はどうした? 出来高が……出来高がぁ!」
俺は無意識で叫んでいた。気が狂ったように、喚わめいていた。
そして、左手を掴んだままの誰かに掴みかかった。
「……お前はっ!」
見た瞬間、ハッとした。
浅井だった。
「お前、警察に連れていかれて……」
浅井は黙ったまま、ケータイの画面を見せてきた。
そこには、信じられないような言葉が並んでいた。
『今日は、剣辰屋で見張りをしている隅田という男を、閉店してからもずっと見張ってください。よろしくお願いします』
しばらくは、信じられなかった。
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