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夜八時三十分。
月のない夜空に、赤と白のストロボだけが瞬きながら、
ゆっくりと上昇していくのを、ユウはひとり見上げていた。
とうとう、アヤが日本を発ってしまった。
ユウは後悔していた。
ただ、アヤと離れたくない一心で、
何度もアヤに留学を諦めるよう迫ってしまったことを。
アヤが望むなら、どこに居たってすぐに駆けつけよう。
月に来いと言うのなら、ロケットだって飛ばしてみせる。
馬鹿馬鹿しいけど、本気でそう思っていたはずなのに。
今宵は無月。
姿を隠した月になど、飛んで行けはしない。
涙に滲んだストロボが、夜の闇へ溶けて消えて行く。
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