そして、また、秋の風。

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うさぎ女はおしゃべりで、涙もポロポロ止まらぬ様子。だから、みんな唇噛んだり、目頭をおさえたりする羽目になって、ああ、あの絵描きの坊やめ、愛されてやがったんだなぁと泣き笑いの思い出語りは止まなかった。  ポツポツと、雨降るみたいに、誰からともなく。死んじまった若者に、手向けの花束なんて用意できるやつはいないから。おれたちは、いなくなっちまった人間のことを、酒と一緒に味わいながら、煙と一緒に吐き出しながら、道端の石ころに躓くみたいに思い出したことを次から次に、ポトポト、語っていた。  空はやっぱり晴れていました。秋の空は、いやになるほど晴れ渡り。そういえばこの家の庭にも柿の木が一本、あぁ、そういえばあいつは庭のスケッチを一生懸命やっていたっけか。  新聞屋と、口髭自慢の物書きと、その弟子のノッポも気付いて近付いてきて、いつの間にか眼鏡が一升瓶を抱えていた。弔い酒だと言って呑んだが、酔っぱらって声がでかくなったから、看板娘の大きな瞳がチラリとこちらに向けられた。  涙の膜がきれいに見えた。飴玉みたいに艶やかだった。 「よぉし。写真をとろう。こうして集まるのだって、記念みたいなものだ」 新聞屋が言い出して、首から下げた最新だという自慢のカメラを両手に抱えて縁をおりた。 「いやだ。メークがぐちゃぐちゃなのよ」     
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