602人が本棚に入れています
本棚に追加
情に厚く一本気で、ちょっとおばか。からかってうまく転がすにはもってこいの相手だ。
「木津に迷惑かけなかっただろうな?」
白井と真杜の話を聞いていた武内が、険しい顔で白井を見る。こちらもまた、更科と同じく頑固な常識人だ。
「大丈夫! 俺、木津さんの恋愛相談にのってあげたんだから」
どう? えらいでしょ? とばかりに胸を張るむっつ年下の相方に武内はため息をつくばかりだ。子供より子供で手を焼く。世話が焼けて仕方がない。そんな白井をかわいく思うが、時として純粋すぎて、どう扱っていいのか武内はわからないでいた。
「おまえ、彼女もいないのに人の恋愛相談のってる場合か?」
「あ、武内さんひどい! デリカシー!」
明るく笑ってみせるが『彼女』という単語に、白井はひどく傷付いていたりもする。それでも武内の前では、白井は明るくばかな自分でいたかった。武内が幾度となく、無意識に無自覚に自分を傷付けようとも、白井は武内の隣にいる権利を失いたくないと思っている。
武内は白井がゲイであることを知らない。そして、白井がなぜ、武内を相方に選んだのかも『本当の理由』を武内は知らずにいる。きっと、この先もずっと永遠に、本当の理由を武内が知ることは――ない。
最初のコメントを投稿しよう!