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「気配り上手で優しくて、背も高いし、顔もかわいくてかっこいい。それで、なんで恋人がいないのか不思議。って、俺のファンの子がよく言ってる」
「は……なにそれ。ファンと、なに話してんだよ」
白井は気付いていない。真杜が『彼女』ではなく『恋人』という単語をわざわざチョイスしたことを。
注文を済ませ料理が運ばれてくる間、真杜は会話の糸口をどこから引っ張りだそうかと考えていた。
(自分から言おうとしないことを聞きだすのもなぁ……)
白井が女性に興味がないことは、薄々わかっていた。百八三センチという恵まれた身長に加え、顔立ちは中性的で綺麗にもかわいくもかっこよくも見える。性格は素直で明るく天真爛漫。大きな欠点はどこにも見当たらない。
そんな白井に、恋人がいないなんてことは考えられない。理由があるとするならば、恋愛そのものに興味がないか、長く片想いしている相手がいるか、叶うはずのない不毛な恋をしているかのどれかでしかないと真杜は思っている。
「白井は好きな人いないの?」
料理が運ばれてくるタイミングで、白井に取り皿を渡してやりながら、真杜はさりげなく聞いてみた。
「いない」
即答。あまりに早い。今の早さは、この手の話を回避したいという気持ちからくる焦りだと真杜は推測する。
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