第2話【膝を抱えたアップルパイ】

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 白井は素直で天真爛漫で、誰に対しても壁を作らない。しかし、相方である武内にだけはどうしてか微妙に距離を置き、見えない薄い壁を一枚張っているように真杜には見える。口答えもせず従順に武内のそばにいる大きな犬。真杜の目には、ずっとそんなふうに映っていた。  白井は、真杜にも雫にも、うるさいくらいなんでも話し、誰に嫌われても平気だと公言しているが、武内に対してだけは嫌われないよう必死になっている。 「は、はは。武内さん?」  白井の頭の中、否定の言葉がぐるぐるまわるが、どれひとつとして声にならない。  どうして? なんで? そんなにも自分はあからさまだったろうか? と、白井はだんだんと顔色をなくしていった。 「安心しろよ。俺しか気付いてない。つうか、俺しか気付けない」  顔面蒼白になってしまった白井を見て、直球すぎたことを真杜は後悔した。 「き、気まずくなったりしない?」 「は? 誰と誰が」 「俺と真杜が」 「なるわけないじゃん。なに言ってんの、おまえ?」 「黒沢いたじゃん」 「黒沢? あー、おまえの元相方な」  なぜ急に黒沢の名前がでてくるのかが、真杜にはわからない。白井と黒沢で『パンダ』というコンビ名で活動していたのは、たったの一年だ。 「……ゲイだって言ったら、気まずいって言われて、それで解散になったから」  
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