第1話【感傷的なキルシュトルテ】

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「…………」 (神様、なんで俺は白井と一緒に寝ているんでしょうか……しかも、裸で!!)  ホテルのシングルベッドに男がふたり。今も尚、すやすやと寝こけている金髪の男は、白井縁(しらいえにし)二二歳。東京の劇場を拠点に活動している芸人で、若い女の子に大人気の『マシュマロバンブー』というコンビのボケ担当だ。  一方、先に目覚めてしまったが故に、なぜ裸で? と頭を抱えているのは、大阪を拠点に劇場やローカル番組などで活躍している芸人『木更津ドッグ』の木津柊生(きづしゅうせい)二五歳。  ふたりとも見事なまでに、すっ裸である。昨夜着ていたとおぼしき衣類は、ベッド下に散乱しており、脱ぎながら、あるいは脱がされてベッドになだれ込んだことが容易に想像できる。 (マジか……いや、なにがマジやねん! なんもあるはずないやんけ!!)  呆然としながらも、木津は昨夜の記憶を辿ってみた。昨日はハロウィンで、東京のライブハウスで開催された『マシュマロバンブー×虹色キャラメル=マシュマロキャラメル+α』という長ったらしい名前の合同ライブに、サプライズゲストとして出演した。そう、そこまではいい。  長年、犬猿の仲といわれてきた虹色キャラメルのふたりとも交流を深め、六人でやったコントは最高の出来で、感動的なフィナーレで幕を閉じた。問題はその後だ。 (えっと、打ち上げ。そうや、打ち上げに行ったんや)
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