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「更科さんには内緒にして、武内さんにも誰にも言わないでって言うから。武内さん、口は固いよ」
「俺とおまえと武内さんと、あと中島だけが知ってるってことにするんやな?」
「そう」
考えこむ木津を見て、もうすぐオチそうだと白井はこっそり口角をあげた。義理固く人情に厚い男。弱味を見せれば、すぐにほだされてしまうような単純さ。
(木津さんて幸せの壺とか買わされちゃうタイプかなあ?)
「わかった。けど、いっこだけ約束せえ」
「なに?」
「どんなことになっても、絶対ちゃんと武内さんには気持ちを伝えろ。それが条件や」
「……わかった」
武内に気持ちを伝える。それができずに今ここまできたのに、友人の協力を得たからといって簡単にできることではない。わかったと返事はしたものの、白井はまったくわかっていなかった。
そして木津柊生という男のことも、ほんの少しもわかっていなかったと白井が知るのは、疑似恋愛がはじまるこれから先の話である。
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