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「ちょ、離せや!」
「おはよう。木津さん」
「おう、おはよう。離せ、て」
何度も言うが裸である。向き合う形で抱きしめられ、あろうことか白井は足まで巻き付けてきて、いろいろと大変なことになっている。
「やだ。寒いんだもん」
「それは裸やからや」
「あ。もしかして木津さん、昨日のこと覚えてないの?」
顔を覗きこまれドキッとする。白井の色素の薄い茶色の大きな目は、まるで木津の心の奥底まで暴こうとするかのようだ。
「お、おまえのほうが覚えてないんちゃうん? べろべろに酔うてたやん」
「酔ってないよ。俺、ザルだから」
「え」
「木津さんと一緒にいたくて酔ったふりしただけ」
つまりは確信犯だ。そういえばと、木津は思いだす。真杜が言っていたのだ。
『こいつ酔っぱらったら、タクシーつかまえて放りこめばオッケーですから』
その時は、そんな非情なと思ったのだが、今になって考えてみると、酔っぱらっても酔っぱらってないからという意味だったのだろうと木津は思う。
(わかりにくいねん!!)
「あぁ、もう……」
「別になんもしてないよ。どこも痛くないでしょ? それに、なんで裸だからって疚しいことあったふうになってんのか意味わかんない」
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