第1話【感傷的なキルシュトルテ】

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「で、木津さんは、いつまで裸でいるつもり?」  くすくす笑われ、ハッとする。 「んじゃあ、俺帰るね」 「お、おう。気をつけて」  帰れやと言うつもりが、重ねて「またね」と笑う白井の声と、いきなり眼前に迫ってきた顔とで言葉が続かなかった。 (え……?)  ぱたんと閉まるドア。裸のまま取り残される木津。ベッドの上で呆然と、数秒前に起きたことが頭の中で再生される。 (え? えっ? 今、あいつ……キスした? なんで!? ええっ!?)  くちびるに残る感触と、白井の甘ったるい香り。一体なにがどうなってキスなのか、木津にはさっぱりわからない。 (からかわれただけやんな? それ以外ないよな? あるわけないよな?)  何度も何度も確認して、大きなくしゃみをひとつしたところで、木津はようやく下着を手にとった。
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