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第2話 友人として。
文月と俺は2人共、生まれ月の名前を親に付けられた共通点もあり、直ぐに打ち解け、仲良くなる迄さほど時間が掛からなかった。仕事を終えてからも、2人で毎日の様に遊びに出掛けた。飲みに行ったり、買い物帰りに一緒に食事をしたりもした。
映画の話しをして、好きな映画監督が同じだと分かり、その監督の映画が上映されれば、何度も映画館に足を運んだ。そうして、一緒に居る時間が自然と増えていった。
文月と過ごす時間はとても楽しかった。互いの家を行き来する様になり、気が付けば終電の時間が過ぎてしまい、相手の家に泊まる事もしばしば有った。俺は、親しくなればなる程、彼の傍に居るのが辛くなった。
(だって、俺は彼を好きだから…彼は、俺を友人としてしか見ていないから…俺は男だから、文月が恋愛対象として見てくれない事は、良く分かっている。このまま友人の振りを続けても良いのだろうか…)
考えれば考える程、不安な気持ちに押し潰されそうになった。いっその事、距離を置いた方が良い。そう思いつつも、離れる事が出来ず、2人で過ごす様になってから、既に1年が経過していたある日の事…
『仕事の後、俺の家に来いよ。一緒に食事をしよう。』
いつものように文月が俺を誘って来る。断る口実も思い付かず、結局、彼の家へと向かった。玄関のチャイムを鳴らし、目を閉じて、頭の中で彼に伝える言葉をシュミレーションする。「毎日会うのは止めにしよう。」今日こそは、彼にそう言わなければ…
「ガチャッ」と音がして、ドアが開いた。
『お前。何で目を瞑ってんの?早く入れよ。』
彼が笑いながら、俺を出迎えてくれた。
「うん…あっ。来る途中に酒屋さんに寄ったら、美味しそうなワイン売ってたから…」
そう言って彼に買ってきたワインを手渡した。
『おっ。このワイン俺好き。食事の時に一緒に飲もうぜ。取り敢えず、座って』
「うん。」
返事をしてソファーに腰を掛けると彼も隣に座り、此方に顔を向けた。
『水無月。今日は、俺が料理作るよ。トマトとベーコンのパスタ好きだろ?お前に食べて貰いたくて、昨日家で練習したんだ。』
そう言いながら、嬉しそうに微笑む彼の顔を見て、文月への抑えていた感情が溢れ出し、涙が頬を伝い落ちた…
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