第77話 仄かな香り。

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第77話 仄かな香り。

組み敷かれたベッドの上から、女性が好みそうな甘く爽やかな柑橘系の香りが仄かに漂っている。 (文月は香水を身に纏わない。ならば答えは一つ、此処で彼とベッドを共にした人が在る。文月に尋ねるまでも無い。昨夜の彼女だ…この部屋に足を踏み入れる迄は、文月の自分に対する想いが、僅かにでも残ってくれているんじゃないかと心の何処かで期待…いや、自惚れていた。だが、現実はどうだ?文月が俺に求めているのは、心を通わせ合う事では無く、身体を重ねる行為だけ。 滑稽だな…異性が恋愛対象の文月と同性愛者の俺では、最初から無理が有った。だが、其れで良かったんだ。俺も同じだから…) (もう大丈夫、全ては過去の事なんだと…そう思っていた筈なのに、心が揺さぶられている。だから、お前だけを責める事は出来ない。もう、彼是考えるのは止めにしよう。周は大切な友人、文月は友人で有りセフレ、そう決めたんだから…) 震える指先で文月の頬にそっと触れる。彼の身体がびくりと震え、眉を顰め苦しげな表情で水無月の手に自分の手を重ねると指先をキツく絡ませた。 「文月…」 耳元で囁き、膝頭で文月の中心を擦ると、僅かに残っていた柔さが消え失せ、硬く峙った芯が脈打ち、腰を動かす度に彼から漏れた汁が水無月の膝頭と内腿を濡らした。呼応する様に自身の先端からも蜜が溢れ、混ざり合う。文月が首元に顔を寄せて来た。強く吸われ、首筋に甘い痛みが走る。 「あっ…」 舌先で耳孔を嬲(なぶ)られると、ぴちゃぴちゃと水面に触れるような音が水無月の耳奥に響き、情欲を煽った。 「んんっ…あ…」 『ふぅ…水無月…触って。』 文月は水無月の手を自身の中心へと導く。盛った雄の頂上部は、先走り液で艶めいていた。水無月が手の平で扱き始めると、文月も又、彼の反り勃った芯に触れた。 「あっん…はぁ…文月ぃ…」 『う…はぁぁ……』 ぬち…ぬちゃ…ぬちゃっ…双方から発せられた湿った音が鳴り響き、熱が高まる。 「ひぁあっ…」 先端を爪で引っ掻かれた刺激で嬌声が漏れると、唇を塞がれ、くちっ…くちゅっ…咥内を舐め尽くされた。 「んっ…ふっ…はんん…」 『はぁ…水無月…』 ぐちゃぐちゃと雄が擦り合い、動きが加速し、高みへと向かう。文月に肩口を噛まれた刹那、水無月は快感の波にのまれ、熱を放出した。 「んぁあっ…!!」 『うっ……!!』 そして、限界に達した文月の先端からも、低い呻き声と共に白液が飛び出した。
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