三日月

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記憶にある最初の星空は親父と一緒に見たやつだ。あの頃の俺は親父と一緒にいるのが嬉しくてなにをするにも楽しかった。 小学生になっても一緒に見に行ってた俺たちを誰だったか冷やかしてたな。 今考えればバカバカしいんだけど、あの時の俺は本当に嫌だった。 それが最後に見た星空だった。 それからはどこか恥ずかしくて、親父と話すらしなくなった。空を見ることすら親父を想ってるようにとられる気がして、見ようともしなかった。 今夜、初めて一人で見ている。親父が死んだこの夜に。 久しぶりにみた星空はどこか息苦しかった。吸い込まれてしまいそうで怖い。 どこか息苦しくて吸い込まれそうなのに目を離せなくなるほど、とても綺麗だった。 「なぁ、親父。そこにいるのか?なんでそんなとこにいるんだよ。怖くないのか?」 明るさこそ違えど一生懸命輝いている星たちの中に、確かに一つだけ頷くようにきらめいた星があった。 「……親父、ごめん。本当にごめん。今更遅いけどもっとちゃんと話したら良かったって思ってる」 どうしようもない後悔の言葉が、涙とともにこぼれ落ちていった。 受け止めてくれた人はもういない。
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