虎口余生

1/9
2762人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ

虎口余生

 2033年。ワイルドモンスターと呼ばれる媚薬が世界中に広がり、あまりの人気ぶりに各国が規制をかけ始めた頃。  その副作用と呼べる症状に、一部の人間の半獣化が報告された。外見の特殊性と身体能力の飛躍的な向上。ネット上では彼らをヒーロー扱いする者も多く、若者を中心に人気を加速させる要因となった。  その一方で、半獣化人間の犯罪が徐々に社会問題となってゆく。  犯罪成功率は極めて高く、刑務所からの脱走も多発。能力そのものが武器になることが分かってからは、マフィアなどの犯罪組織がワイルドモンスターを買占め、偽物を売りさばき始めた。一時期は麻薬よりも高値で取引されたほどだ。  横行する偽物と犯罪。各国の政府は半獣化した人間が兵器、もしくは暗躍することがないように早急に条約を取り決め、ワイルドモンスターの販売を全世界で禁止した。  製造元は倒産。ワイルドモンスターは急速に世間から姿を消し、異様だった人気も急速に衰退した。  その後の研究で、半獣化の継続時間は一回の服用で長くともひと月程度だと判明。長く服用しても抗体ができ、最終的には半獣化できなくなることも分かった。そのため、半獣化人間はメディアはもちろんネット上ですら徐々にその存在を忘れられていった。  あれから二年。完全な人へと戻りきれなかった人間がわずかに残っていることを、世間は知らない――。 
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!