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4:考える俺
食事を終えると食器をキッチンまで片付けた。階段を上がって、麻里奈を二階の自室まで一旦戻す。
麻里奈の俺はベッドに座って考える。
俺は自分が寝て見る夢をコントロールする術を知っている。夢と認識すれば良い。夢と気付けば、夢は自分の物になる。そうやって俺は寝ている夢を制御して、好きな人と会ったり、Hな夢想を堪能したりして朝の気分を良くしてきた。
だが、ここまで高い意識レベルで夢と認識しているのは初めてだ。ここまで高い意識レベルだと、夢から覚めて起きてしまうはずだ。拙いのは夢が明らかに長い時、絶対に長寝して会社に遅刻するパターンである。
夢から覚めるには夢の中で目を瞑ると良い。俺の場合はそうして夢から抜け出て意識を取り戻した。
俺は、麻里奈に瞼を閉じさせた。
しかし、一向に夢から覚めない。
拙いな。会社送れてしまう。
夢から覚めないケースは初めてだった。
流石に焦って何度も瞼を開けては閉じ、開けては閉じを繰り返す。しかし夢から覚めることが出来ない。
あぁ、もうダメだな。
心の声まで麻里奈の物に変わってきた俺は、遅刻して上司に怒られようと悟り、とりあえず出勤するためスーツに着替えようと考えた。ベッドの向かい側、出入口の扉の左にあるクローゼットへ歩く。
考えたらバカな話だ。辿り着けるわけないのに夢の中でも会社に行こうとしている。
麻里奈の部屋の木目調のクローゼットの扉は、俺の部屋の物とはそんなに変わらない。
クローゼットを開くと、女子高生が着ているブレザージャケット、チェックのスカート、白ブラウスに赤いリボンがハンガーと一緒に鉄棒に引っ掛けられていた。
「麻里奈は女子高生だったのか」
声色が完全に麻里奈になっている。
情けない。良い年した社会人になって俺はまだ女子高生に対して性的な憧れを持っているに違いない。深層心理だ。夢の中でこんな肉体入れ替わり現象を経験させられては、自分の男の煩悩を嫌でも意識せざるを得ず、不快だった。
おそらく寝間着の下は、完全に女の子の身体が再現されているに違いない。女の子の裸を見たことが無いほど俺だって初心じゃない。だが夢の中とは云え相手が女子高生となると、改めて自らの性欲に不快感を覚え、吐き気を催した。
俺ってそんなに低俗だったのか。
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