6:夢の女子高生

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6:夢の女子高生

 麻里奈の高校は家から徒歩10分の場所にあってすぐに着けた。 「おはよう、麻里奈!」 「おはよう!」  校門を通過し、校舎に入って上履きに替える。廊下を歩く。同じ女子高の友達が次々と麻里奈に声を掛けて来る。  麻里奈が学生生活を楽しんでいるようで安心した。いじめの被害者だったら俺もつらい。  それにしても自分も含めて皆が美少女ばかりだから不思議だ。女子高だから当然女の子しか居ない。どんなに性欲が強い男子高校生でも、 「こいつは無理!」  と言いたくなるブスやデブやデブスは必ず居るものである。ところが、夢の中の女子高は顔面偏差値で選んだように総じて美人ばかり。  男の夢ってつくづく情けない。  好みのタイプである女の子達がいっぱい居ると、ムラムラとする性欲が湧き上がって来る。  ちんちんが無くなっても、男って女を好きになるんだな。  自分の身体が女の子になって初めて気が付いた。  麻里奈のクラス『2年A組』に辿り着く。30人で1クラス。  自分の席に辿り着き、仲の良い近くの女の子達とお喋りさせる。内容は至って下らなかった。昨日のテレビドラマがどうだったとか、この辺は俺の頃と一緒だ。  ただし、女の子達の会話を聞いて不思議なのは、イケメン俳優やアイドルの男の子を「カッコいい」「〇〇君、好き」と言うような、男性に憧れるような話が皆無で、「女優の〇〇さん、素敵だったよね」 「〇〇ちゃん、可愛かったよね」と女性を褒め称える意見ばかりであることだった。  どうもこの辺は俺の嗜好で出来ているようだ。確かに男優を特別気にしたことなどなかった。俺も美しい女優ばかり気にしていた。そんな男の性が夢に影響しているのだろう。  だが、そうとも言い切れない会話が展開される。  この夢の世界のテレビは、宝塚歌劇団のような女性が男を演じる芝居が人気を博しているようだ。 「男役の道明寺遥香さん、カッコ良かったわぁ」 「私は風間涼子さんが素敵だった」 「風間さんの男役も良いよね!」  歌舞伎なら、主に男性の客が女役を演じる男性の芝居を観に行く。宝塚は逆に、主に女性の客が男役を演じる女性の芝居を観に行った。この違いは何だろう。自分達の理想の異性を演じられるのは同性と云うことだろうか。  美少女になっている俺は、きっと男の理想の産物に違いない。
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