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青い空
暑い。どうしようもなく暑い。
空を見上げる。太陽の光がまぶしい。
アイツも、暑がってるだろうな……。早くアイツに水をかけてやろう。そう思うと、自然に足が速くなった。
アイツ……。最後に見舞いに行ったとき、アイツはなんて言ったっけ。
「私、もうすぐ死ぬことはわかってるの。だから、言わせて」
アイツが死ぬ前に一番言いたかったこと。オレは想像もつかなかった。
「ずっと、好きでした」
アイツに言われたとき、オレはすごく嬉しかった。だけど。
考えてみれば、当たり前のことだ。オレたちは付き合ってたんだから。
「今でも、好きです」
でも、アイツはアイツなりに、自分の気持を精一杯伝えようとしてたんじゃないかと思う。
アイツが死んでから、今日でちょうど一年が経つ。今でもまだ、アイツが死んだことが信じられない。
アイツの墓が見えてきた。
あっ……。
墓の前に、誰かいる。オレ以外にも、アイツに会いに来てくれるやつはいたんだ。
「よかったな」
オレの声は墓の前にいる少女にも届いたようで、彼女はオレの方を向くと、笑顔で答えた。
「うん」
「えっ……?」
ア、アイツじゃないか。なんで……。
「やあ、久しぶり。元気?」
「え、あ、うん……。元気だけど……?」
「なんで私が、ここにいるのかって?」
それはね……とアイツはいたずらっぽくほほえむ。
「キミに会いたかったからだよ」
「オレに……?なんか用事?」
アイツはにっこり笑って話し出す。
「伝えたいことがあって。朝からずっと待ってたんだけど、もうこんな時間だし……」
腕につけた時計を見ると、二時半。
「ゴメン、待たせて」
アイツの顔が、少しだけくもった。
「ううん、いいの。こっちこそゴメン。もう帰らなくちゃいけないの。だから、一番言いたいことだけ言わせて」
まるであの日みたいだ。なんて言われるのか、今日ならだいたい想像がつく。
「ずっと、好きでした。今でも、好きです」
あの日、オレはなにも言えなかった。だから、あの日言えなかったことを、今言おう。
「オレもだよ。オレも、おまえのこと、ずっと好きだった。おまえのこと、絶対忘れないから」
アイツの目に、見る見る涙がたまっていった。
「ありが、とう」
アイツの体が、どんどん薄くなっていく。
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