婚活サイト

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震える指先を叱咤して、送信の文字をタップした。すぐ折り返しのメールが届くと、莉奈はふぅ、と安堵の息を漏らした。 誕生日を迎えた翌日、思い悩んでいた自分はあまり姿を見せなくなった。 その反対に今の自分をかなぐり捨てて新しい自分になりたい気持ちが現れた。 逆にプラスに考えよう、今の自分には失うものは何もない。その気持ちが心をすっと軽くする。その勢いのまま怖くて踏み出せなかった「婚活サイト」ならぬものに登録してしまった。きっかけとして、そういうものに手を出してしまったが、何も行動しないよりかはマシに思える。そう思うことにする。 アプリを開いて、自分の個人情報を晒してしまう恐怖に若干昨日の自分が顔を出してきて、ふるふると首をふる。昨日の自分グッバイ。 名前、といっても仮名または愛称でよく、生年月日、職業、年収、家族構成、血液型、趣味、好きな音楽、好きな食べ物と飲み物、幼少期の習い事や、足のサイズ、とそんなこと知らなくていいだろうと思わずツッコミたくなるような質問が50問ほどの項目欄が長々と続いていた。 その質問を1つずつ入力して、まだ見ぬ自分の伴侶に思いを馳せた。 (あーあ、幸せになりたい)
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