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アイスカフェオレ
待ち合わせの場所は最近よく見る洒落たカフェだった。15分も早くに着いていたが、中々お店に入れずに莉奈は早くも心穏やかではなかった。緊張で手が汗ばむ。
アプリを使って婚活サイトに登録したあの後すぐ、反応があった。多数の男性からサイトを介して連絡がきたのだ。月額料金を支払ってでも結婚したい真剣味のある人たちが利用するサイトを選んだのだから、そうこなくてはと意気込んで、莉奈は数あるメッセージの全てに目を通した。
その中の1人であるーー英臣さん、という33歳の男性と今日、会う予定になっていた。
何度か深呼吸をして、意を決して、扉を引いた。
カラン、と音と共にスタッフがやってくると待ち合わせです、と小さく告げた。
案内された席には、すでに誰か座っていた。後ろ姿でよく見えないが、多分英臣さんという男性だろう。
コツコツとヒールが床を叩く音が響いて、自分の心臓の音とリンクする。ヒール音よりドキドキが勝った頃には、声を発していた。
「お待たせして、すみません」
すみません、ともう一度言い、アンティークの椅子に腰かけると英臣が顔を上げた。
第1印象は3秒で判断されるとよく言うが、アプリのプロフィール画像より、はるかにカッコいい印象を受けた。荒い画像でもまあまあ好みの顔をしていたが、クリアで見るとまあまあが取れた。好みだった。
「はじめまして、莉奈です。英臣さん?で合っていますか?」
「はい、はじめまして、莉奈さん。英臣で合っていますよ」
そう言って、英臣が優しく笑った。
歳上だからなのか、彼の物腰の柔らかい声色に莉奈の緊張は少しずつ溶けていった。
少ししておしぼり、お冷やとすでに英臣が頼んでいたアイスカフェオレを持ったスタッフがやってきた。アイスカフェオレです、お待たせしました、と言うスタッフを見ていたら、数日前に彼のプロフィールで流し見た、好きな飲み物欄の" アイスカフェオレ "を思い出した莉奈はスタッフに注文を聞かれて、アイスミルクティーと答えた。
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