26人が本棚に入れています
本棚に追加
目が覚めると、そこには、二本の脚があった。
スカートから伸びる、紺色のハイソックスを履いた脚。
ほどよい肉付きの、麗しいカーブを描いたふくらはぎ。
膝からスカートまでの艶やかな肌。
ずっと、ずっと、探していた理想の脚だ。
それが、今、目の前にある。
俺は勢いよく飛び起き……るはずが、身体が動かない。
両手が後ろで縛られ、パイプ椅子に座らされていた。
コンクリートむき出しの、冷たそうな壁に四方を囲まれた空間。
窓はなく、頭上から放たれる、白い蛍光灯の光。
家具はなく、ただパイプ椅子に座らされた俺と、理想的な脚の持ち主だけが存在している。
「目覚めましたか」
脚の持ち主が振り返った。
どうやら、俺は、まだ目覚めていないらしい。
もういちど、目を閉じ、深呼吸してから、再び目を開ける。
しかし、脚の持ち主は、目を閉じる前と変わらない。
理想的な脚の持ち主は、セーラー服を着ていた。
赤色のスカーフが、殺風景な部屋の中、ひときわ鮮やかだ。
ここまではいい。
理想的な脚の持ち主が、学生だろうが、OLだろうが、主婦だろうが、誰であろうが、一向に構わないと思っていた。
しかし、バーコード頭で、口ひげを生やし、眼鏡をかけたオッサンだなんて。
「ふざけんな!」
コンクリートの壁に俺の叫びが反響する。
長年、探し続けていたのだ。
雨の日も風の日も、すれちがう脚の中から、ずっと探し続けていた。
ようやく出会えたのが、こんな意味不明な、おっさんの脚だったなんて、到底受け入れることなど出来ない。
「どういうつもりなんだ!」
セーラー服を着たバーコード頭のおっさんに、こみあげる怒りをぶつけた。
最初のコメントを投稿しよう!