バーコード刑事

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目が覚めると、そこには、二本の脚があった。 スカートから伸びる、紺色のハイソックスを履いた脚。 ほどよい肉付きの、麗しいカーブを描いたふくらはぎ。 膝からスカートまでの艶やかな肌。 ずっと、ずっと、探していた理想の脚だ。 それが、今、目の前にある。 俺は勢いよく飛び起き……るはずが、身体が動かない。 両手が後ろで縛られ、パイプ椅子に座らされていた。 コンクリートむき出しの、冷たそうな壁に四方を囲まれた空間。 窓はなく、頭上から放たれる、白い蛍光灯の光。 家具はなく、ただパイプ椅子に座らされた俺と、理想的な脚の持ち主だけが存在している。 「目覚めましたか」 脚の持ち主が振り返った。 どうやら、俺は、まだ目覚めていないらしい。 もういちど、目を閉じ、深呼吸してから、再び目を開ける。 しかし、脚の持ち主は、目を閉じる前と変わらない。 理想的な脚の持ち主は、セーラー服を着ていた。 赤色のスカーフが、殺風景な部屋の中、ひときわ鮮やかだ。 ここまではいい。 理想的な脚の持ち主が、学生だろうが、OLだろうが、主婦だろうが、誰であろうが、一向に構わないと思っていた。 しかし、バーコード頭で、口ひげを生やし、眼鏡をかけたオッサンだなんて。 「ふざけんな!」 コンクリートの壁に俺の叫びが反響する。 長年、探し続けていたのだ。 雨の日も風の日も、すれちがう脚の中から、ずっと探し続けていた。 ようやく出会えたのが、こんな意味不明な、おっさんの脚だったなんて、到底受け入れることなど出来ない。 「どういうつもりなんだ!」 セーラー服を着たバーコード頭のおっさんに、こみあげる怒りをぶつけた。
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