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ようやく通路から抜け出した。
ビルとビルの狭間から覗く青空。
降り注ぐ光の眩しさに目がくらむ。
「ありがとう、助かったよ」
礼を言うと
「いえいえ。無事で何よりです」
おっさんは、くいっと中指で眼鏡をあげた。
その瞬間、風が吹いた。
おっさんのバーコードが風に舞い、頭皮から剥がれた。
側頭部の毛を伸ばして貼り付けたものだったのだろう。
両側から伸びるバーコードが、しなやかに風に揺れ、その隙間を、すうっとトンボが通って行った。
バーコードを揺らす風は、おっさんのスカートもはためかせる。
伸びる魅惑の脚は、四つんばいで通路を進んだせいで、汚れていた。
しかし、程よい肉付きに、魅惑の曲線美、滑らかな肌質は変わりない。
こんなにも、美しい脚を汚してまで、俺を助けてくれた事が嬉しかった。
「では、私は仕事に戻ります」
おっさんは、バーコードをなびかせたまま、敬礼をする。
「せめて、名前だけでも教えてくれないか」
手に入らなくてもいい。
再び、その魅惑の脚を眺める事さえできたら。
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