大滝詠一を聴きながら

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「まったく、あの客~」 持田が鼻息を荒くしてる。ヤバい、凶暴性発揮のサインだ。 「どうした?」 藤木がすぐに持田のフォローに入る。 どうやら、お客さんからコーヒーの届くのが遅いと文句言われたようだ。 コーヒーが遅いくらいで文句言う客も客だが、それに腹を立てるようでは、 この仕事をしているとキリがない。 6時を過ぎて直美ちゃんが加わった。 ふと、大滝詠一のロングバケーションが流れてきた。 BGMの選曲はいつも彼女の役目のようだ。 うん、このアルバムを聴かないと調子がでないよ。 というか、このアルバム以外聴いたことないな。 「おっ、国鉄マン。どうだい調子は?」 厨房付近から声を掛けられ振り向くと、知らないスーツ姿の男性。 「あっ、なんとかやってます」 「支配人から聞いてるよ、頑張ってるね」 「あ~、ありがとうございます」 「サーロイン3枚でボーナスだすよ」 なんて言って去っていった。 ボクが4月から国鉄で働くことを知っている。 あの人誰だろう? 年齢は20代だろうけど、たぶん偉い人なんだろうな。 あとで直美ちゃんに聞いたら、 柿沼さんといってマネージャーだそうだ。 福島出身で支配人の次に偉いそうだ。 直美ちゃんは何でも知っている。 なんとなくボクの居場所ができた。 そんな気がする週末の夜。
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