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8時過ぎ、急にお客さんが減った。
手持ち無沙汰のボクと清水さんはセンターの後ろで待機している。
「この前、男の友達にスキー誘われたの」
「うん」
「それでね、泊りで行こうって言うんだよ。普通泊りで誘う?」
「いきなり泊りはないんじゃない?」
「でしょう?断ったけど」
「ふうん」
「岸くんならいいけどね」
「えっ・・・。ボクはスキーできないんだ」
そのとき、大倉店長が背後から現れた。
「お話し中ごめんね、お客さんが水欲しがってるみたいだよ」
うわぁ、これが厭味か。
慌ててお冷サービスをする。
ところで、今の清水さんの言葉って、なんだろ。
とても気になる。
だいたい、スキーできる出来ないの話じゃないような。
それから清水さんが気になり始めた。
チラチラ見てしまう。
センター下のグラスストックを取り出すためにしゃがんだときに、
スカートの中のお尻のラインが見えたとき。
ボ~と店内を見ているときの憂いをもった目など。
だけど、それ以上話す機会はなかった。
店内ではいつのまにか大滝詠一の『恋するカレン』が流れていた。
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