19人が本棚に入れています
本棚に追加
「それでね岸くん、彼女が二人で話したいというのでよろしくね」
なんて言って衣笠さんは去ってしまった。
ありゃりゃ。
話ってなんだろう?彼女から用件を話すだろうと思ったが、
ちっとも話す様子がない。
しょうがない。
ボクの脳みそをフル稼働して
部活のこと、教習所のこと、今やってるバイトのことなどを話した。
なんとか話題が続き、電車の時間が近づいてきた。
田舎の電車は1時間に2本程度なのだ。
ボクが駅に行こうとすると、百瀬が送ると言ってついてきた。
「メガネからコンタクトに変えたんだ」
「そうだよね、ずいぶん印象変わったよ」
「どうかな」
とボクを見つめてくる。
「うん、とっても似合ってるよ」
二人で歩きだすと百瀬が饒舌になった。
駅まで5分くらいの道のりだけど、さすがに疎いボクも気づき始めた。
それからは、なるべくそういう雰囲気にならないよう明るく振舞って対応した。
そして電車がホームに入ってきたのを合図に
「またね~」
と言って手を振り駆け出した。
どうしても、高1のときに振られてからそういう話は苦手なんだ。
最初のコメントを投稿しよう!