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「さっきから違うって言ってるだろう!!」
罵声に振り向くと森君がお客さんに怒鳴られている。
「お客様、どうされましたか?」
すかさず店長がフォローにまわる。
「注文した生姜焼き定食が来ないで違うものばっかり持ってくるんだよ」
「申し訳ありません。すぐにお持ちいたします」
厨房のミスか、森君のミスか、それともお客さんの勘違いか分からないけど
お客さんを怒らせるわけにいかない。
他のお客さんもいるしね。
厨房にお願いして最優先で料理を作ってもらい、店長が持っていく。
「大変お待たせ致しました。申し訳ありませんでした」
森君が固まっているのをみて店長は
「さっきのお客さんに、お詫びのコーヒーを食後に届けて」
と言った。
店長の苦情処理は完璧だ。
相変わらず「チーン、チーン」と料理はできるので、どんどん運ばなければ料理が冷めてしまうので注意しないといけない。
ボクは頃合いをみて、森君にコーヒーを届けるよう伝えた。
森君はちょっとビビっていたが、勇気をだして持っていく。
「さきほどは大変失礼しました。よろしければコーヒーをどうぞ」
「あっ、そう、ありがと」
それを見て、とりあえずホッとした。
そのお客さんは帰り際、森君のところに行って
「コーヒーごちそうさま」
と声をかけたらしい。
気がつけば、お客さんもひけ、まったりとしたいつものレストランに戻った。
みんな、やり遂げたような良い顔をしている。
なんとなく、心がくすぐったいような良い気分に包まれた。
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