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35.***名付***
「何をしたと思う?」
意味ありげに笑うアカリの美しい顔を凝視し、己の身体を確かめる。筋肉痛のような痛みはあるが、それ以外は傷や痕跡がない。霊力も神力も回復していて、不審な点は見つからなかった。
あたふたと確認する男を楽しそうに眺めるアカリの隣で、華守流と華炎が顔を見合わせて肩をすくめる。
「大したことじゃないぞ。……気にするな」
今の微妙な間は何だろう。逆に不安を掻き立てられた真桜が、アカリの肩を掴んだ。じっと見つめる先で、真桜の唇に誘われるように顔を近づける。あと少しの距離で、半透明の扇が挟まれた。
『いい加減になさいませ。アカリ様』
藤之宮の笑みを含んだ声に、周囲に揶揄われたと知った真桜が座り込む。
「藤姫よ、簡単に明かしてはならぬ」
不満げに唇を尖らせて抗議するアカリに対し、真桜は驚いた顔で二人を見つめる。
『あら、私の主は真桜様ですのよ。お助けするのは当然ですわ』
「多少懲りねば、これは同じことを繰り返すぞ」
『……そう、ですわね』
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