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華やかと表現するのとはちょっと違う。どこぞの姫君方からアカリ宛に届く文の山、最近は真桜にも届くのでアカリの悋気――と言うと怒られるので焼きもち――が激しくて大変だった。
「うーん、華やかっつうか……」
「騒がしくなった、が正しい?」
「そっちのが近い」
頷いた真桜は、首筋に感じた冷たい指先に気付いて振り返った。
主上がおられる御簾の前――当然厳重な警備の奥だ。そこにふらりと現れたアカリが唇を尖らせて背中から抱きつく。
「アカリ? 何かあったのか?」
咎めるより先に心配して顔を覗き込めば、蒼い瞳が瞬いた。ふわりと笑みを浮かべる護り人に見惚れる真桜へ、瑠璃の姫が呟く。
「溺愛、ですわね」
「こういうのは言わないであげるのが、優しさだよ」
今上帝とその奥方の会話に頬が赤くなる。
「ところで、アカリ殿は透けているけれど?」
山吹の問いかけに、真桜も視線を彼の足元へ向けた。人外であり神族でもあるアカリの足元は……当然ながら透けている。正確には全身が透けているのだが、幽霊より密度は濃い。
「どうしたの?」
やっぱり問題が起きたのか。
眉を顰めた真桜へ、機嫌が良くなったアカリが微笑みかけた。
「お前が帰ってこないので霊体を飛ばした」
その爆弾発言に、人間3人は揃って絶句するしかなかった。
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