05.***濃影***

2/2
361人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
 華やかと表現するのとはちょっと違う。どこぞの姫君方からアカリ宛に届く文の山、最近は真桜にも届くのでアカリの悋気――と言うと怒られるので焼きもち――が激しくて大変だった。 「うーん、華やかっつうか……」 「騒がしくなった、が正しい?」 「そっちのが近い」  頷いた真桜は、首筋に感じた冷たい指先に気付いて振り返った。  主上がおられる御簾の前――当然厳重な警備の奥だ。そこにふらりと現れたアカリが唇を尖らせて背中から抱きつく。 「アカリ? 何かあったのか?」  咎めるより先に心配して顔を覗き込めば、蒼い瞳が瞬いた。ふわりと笑みを浮かべる護り人に見惚れる真桜へ、瑠璃の姫が呟く。 「溺愛、ですわね」 「こういうのは言わないであげるのが、優しさだよ」  今上帝とその奥方の会話に頬が赤くなる。 「ところで、アカリ殿は透けているけれど?」  山吹の問いかけに、真桜も視線を彼の足元へ向けた。人外であり神族でもあるアカリの足元は……当然ながら透けている。正確には全身が透けているのだが、幽霊より密度は濃い。 「どうしたの?」  やっぱり問題が起きたのか。  眉を顰めた真桜へ、機嫌が良くなったアカリが微笑みかけた。 「お前が帰ってこないので霊体を飛ばした」  その爆弾発言に、人間3人は揃って絶句するしかなかった。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!