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これ呼ばわりした主をよそに話が決着したらしく、呆然と座ったままの真桜の前で彼と彼女は和解した。置いてきぼりの主が哀れになったのか、華炎がぽんと肩を叩く。華守流も真桜の頭を撫でてしゃがみこんだ。
「ごめん、状況が理解できない」
「お前が寝ていたので、今回の事件の後始末をしてやったのだぞ? 黒葉は闇の神王への報告に出向いているし、藤之宮の屋敷は山吹が処分するそうだ。華守流と華炎は逃げ出した魂の残りを狩った。俺はお前の身体で数々の相談事を解決したのだ。留守になったこの屋敷を藤姫が……」
「ちょっと待って。いつの間に、藤之宮様のお名前が『藤姫』になった?」
『……引っかかる場所が違う』
華炎の呟きを後回しに、真桜はアカリの袖を掴んだ。
「神族の与えた守護役ならば、使役の名が必要だ。まさか人前で『藤之宮』と呼ぶわけにいかないだろう」
「言いたいことは分かる。ただ、アカリが名付けるのは違う気が」
『そこか』
引っかかる場所が違う、今度は華守流が溜め息をついた。寝起き同様、まだ頭が働かない真桜の反応を楽しんでいたアカリは、ここでようやく対応する姿勢をみせる。座ったままの真桜の前に膝をつき、その頬に手を当てた。
「藤之宮家の姫に、藤姫以上の名はあるまい。だいたい神族の名付けに不満を言うなど、お前くらいだ」
「オレが付けたかった」
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