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05.***濃影***
口調がぞんざいになる。
高天原の最高神であり、太陽を司る女神である天照大御神の眷属だったアカリが地上に降りたことで、彼女も暇を見つけては顔を見せるようになっていた。
彼女ほど上位の神が地上に降りるなど稀で、おかげでこの国は豊穣と繁栄が約束されたも同然だ。拒む理由はないのだが……彼女があまりに頻繁に顔を見せるため、多少の問題も起きていた。
――光が強くなれば、影も濃くなる。
天にあって光を放つ存在が地上に降りれば、当然影の位置がずれる。天と地底が乱れたため、最近はあまり光臨していなかった……筈なのに、どうして瑠璃の姫と話をしているのか。
「え、また降りちゃった?」
「いいえ、あの御方は思慮深いのよ。あなたとは違うわ」
闇の神族、それも王族に連なる真桜への嫌味が滲む。一瞬目を見開くが、すぐに真桜は口元に笑みを浮かべた。ちゃんと本人へ嫌味を口に出来るくらい、今の彼女は幸せなのだ。満たされているからこそ、嫌味も正直に口に出来た。
よい傾向だと判断した真桜へ、黙って見ていた山吹が声をかける。
「アカリ殿もだいぶ馴染んだし、陰陽寮も華やかになっただろう」
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