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さて、俺はどうしたものか。
俺はあの日、男がとても哀れに見えた。罪を暴かれた罪人のように、与えられた罰を背負い海までやってきた。
そして、俺は知ったのだ。この世界に最初から自由などなかった。花屋の娘、心優しき老婆、純朴な少年、罰を受け続ける男。そして、俺。誰にも自由は与えられなかった。
この世界の価値を見い出すことが、俺には出来なかった。
いつだったか、俺の妻であった女が言った。
「いつまでも自分の理想ばかり追い続けるあなたに、私はもうついていけないわ」
と。確かにその通りだ。妻にも会社にも、文句があったわけでは無い。それらを重荷と感じてしまう、俺から逃げたのだ。
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