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思い出したくはないが、死ぬ間際になると俺が真っ当な人間だった頃の記憶ばかりが蘇る。
俺はそう、この男が嫌いだった。この町で死神のように、住人達の命を刈り取っていく。俺からしてみたら、心無い悪魔同然だ。いや、どちらも変わらないのかもしれない。
どちらにしても、俺がこんな奴に心を許すはずがない。他の住人達がどうであるかは知らないが、この男に自らの最期を託して良いはずがないと俺は思うのだ。
住人達は死ぬ前に、彼と会って言葉を交わす。しかし、俺は何を話すべきなのか分からなかった。世間話をする者もいるし、懺悔する者もいるという。
花屋の娘は自らを弔う花を託した。心優しき老婆は死に場所を選んだ。純朴な少年は1番好きだったものと共に家へ帰ることを望んだ。
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