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1 暗黒世界制樹
それは、俺、秋永玲と神谷遥夏が、高一の夏休みに不思議な世界で体験したことだった――。
俺は、昆虫採集が趣味で、幼なじみの遥夏を誘って、近くの春日の原公園にいた。
あまりにミンミンゼミがせわしなく鳴いているので、俺の額からじわりと?く汗さえも消し飛ばしてくれる。
今年は、素手で捕まえられそうな気がする位、ミンミンゼミの気もゆるんでいる。
だが、下草は膝丈まであり、息を殺して近寄っても逃げてしまう。
そんな折だった。
「おーい! 遥夏! こっちに来てみなよ」
俺は、幼稚園からの腐れ縁、遥夏と今年も遊び倒したい。
いい友達だと思っているからな。
遥夏は今日も出掛けるのに、ブラックジーンズに長袖と紺のパーカーまで着て、重装備だ。
俺なんて、半袖ネコTシャツに一応のベージュの綿パンツと虫取り網とかごだよ。
「若い時は美白が大事だってお母さんが悩んでいるのよ。外は日に焼けるから嫌なのにな。虫にもちょこちょこ刺されちゃった」
なんて、遥夏がクヌギの木一つ向こうでぶつぶつ言うけれども、何だかんだ男友達は俺しかいないようだ。
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