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仕方なくでも何でもいいから、一緒に遊びに来るんだよな。
そこは、可愛いヤツだとみなしてもいい。
「なあに? 虫取りは一人でやるから付き合って欲しいと言ったのは、玲くんじゃなかったっけ。玲くんは、トンボの首を縛って飛ばそうとかするから嫌なのに」
あーあ、遥夏め。
つまらなそうな伸びをして向かって来るのは見えているんだぞ。
「いや、黙って来いって。珍しい昆虫がいるんだ、虫ではなくて、昆虫でいいのだろうか」
俺は、そいつをじっと見つめた。
逃げてしまわないように。
「へえー。クヌギの上じゃなくて下にいるの。分かったわ」
遥夏ったら、又、春日の原に来てまで恋愛小説を読んでいたのかよ。
ここは、虫達の楽園なんだ。
遊び相手は、本じゃないだろう。
白い栞を挟んで閉じ、がさりと草を分け入って来る。
ちょーっと、草の音がうるさいな。
「しっ……」
俺の合図にすかさず、遥夏は、人差し指で口の前にバツを作った。
ぶりっ子したって、ダメだよ。
ん?
遥夏は、無言のまま足が草をかき分けるのにも気を遣っているようだ。
あー。
はい、すみません。
ぶりっ子では、ありませんでした。
「コロムン!」
あ?
俺の足元からか?
何か聞こえたような。
そんな馬鹿なと思うしかないよ。
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