1 暗黒世界制樹

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「コロムン! コロムン!」  草いきれがもうもうと増して俺だけに襲って来るような気がする。  遥夏は大丈夫なのか? 「な、なんだ。おい、遥夏? 誰か喋らなかったか?」 「ん……。私には、ちょっと聞こえなかったかな?」  俺の作った忍者罠、草を結んだものに、わざとかかろうとしているな、遥夏。  見え見えだよ。  それより、さっきのコロムンって小声が問題だよ。 「分かったから、静かにしていろよ」 「OK」  お口の前でオッケーマークか。  何だよ、普通に可愛いって認めて欲しいのか? 「コロムン戦記が始まった。今年も始まったとさ。お前さん聞いたかい?」 「ああ、噂には聞いたよ。恐怖のコロムン戦記が来た。忙しくなるな」  遥夏が俺をつんとつついた。  腐れ縁とはいえ、耳打ちされてくすぐったいのなんの。 「あの、さ。今、私の噂した?」 「噂だって? いや」  遥夏の噂は一年中しているから、心配すんな。  黙っていれば可愛いって噂ばかりだけどな。  だから、本読んでいる時は、長いまつ毛を伏せ気味に、長い黒髪を揺らして可愛らしいんだよ。  ずっ……と滑った音が聞こえた。 「あ、きゃあああ……」  一瞬だった。  足元をすくわれたように、遥夏の姿が消える。     
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