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「コロムン! コロムン!」
草いきれがもうもうと増して俺だけに襲って来るような気がする。
遥夏は大丈夫なのか?
「な、なんだ。おい、遥夏? 誰か喋らなかったか?」
「ん……。私には、ちょっと聞こえなかったかな?」
俺の作った忍者罠、草を結んだものに、わざとかかろうとしているな、遥夏。
見え見えだよ。
それより、さっきのコロムンって小声が問題だよ。
「分かったから、静かにしていろよ」
「OK」
お口の前でオッケーマークか。
何だよ、普通に可愛いって認めて欲しいのか?
「コロムン戦記が始まった。今年も始まったとさ。お前さん聞いたかい?」
「ああ、噂には聞いたよ。恐怖のコロムン戦記が来た。忙しくなるな」
遥夏が俺をつんとつついた。
腐れ縁とはいえ、耳打ちされてくすぐったいのなんの。
「あの、さ。今、私の噂した?」
「噂だって? いや」
遥夏の噂は一年中しているから、心配すんな。
黙っていれば可愛いって噂ばかりだけどな。
だから、本読んでいる時は、長いまつ毛を伏せ気味に、長い黒髪を揺らして可愛らしいんだよ。
ずっ……と滑った音が聞こえた。
「あ、きゃあああ……」
一瞬だった。
足元をすくわれたように、遥夏の姿が消える。
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