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「この地下の世界は気持ち悪い方向に重力が働いているのだろか。鼻血が出てしまうよ」
ビルは沢山ある。
だが、人はどうだろうか。
一人も見掛けない。
そうだ、大切なことを思い出した。
「遥夏は――」
遥夏もここに連れて来られているに違いない。
さっさと探そう。
「おーい。遥夏ー!」
歩き出して返事を求める。
振り返るといる気がしたんだ。
……玲くん、何しているの?
恋愛小説から恥ずかしそうに顔を出す、遥夏がいて欲しかった。
どうしたんだ。
俺と遥夏は幼なじみのただの仲良しだろう?
「高い所は苦手だったようだな。秋永玲」
「誰だ? びっくりするじゃないか」
低い男の声だ。
かん高いコロムンさんとは違うようだな。
「我は、暗黒世界制樹なり」
「何だ。暗黒世界なんとかさん」
俺の耳に直接話し掛けてくる。
頭の中のラジオのようだ。
「もう一度しか言わない。よく聞くんだ。我は、暗黒世界制樹なり」
「何者なんだ。暗黒世界制樹とは」
きっと、スピーカーでもあるのだと思って、辺りを見回した。
「この世界を統べる者だ。コロムン、汝らも我に従うのだよ」
「コロムンさんとは、あのかん高い声で叫ぶ小さな生き物なのか?」
忍者罠から声が聞こえたな。
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