1 暗黒世界制樹

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「この地下の世界は気持ち悪い方向に重力が働いているのだろか。鼻血が出てしまうよ」  ビルは沢山ある。  だが、人はどうだろうか。  一人も見掛けない。  そうだ、大切なことを思い出した。 「遥夏は――」  遥夏もここに連れて来られているに違いない。  さっさと探そう。 「おーい。遥夏ー!」  歩き出して返事を求める。  振り返るといる気がしたんだ。  ……玲くん、何しているの?  恋愛小説から恥ずかしそうに顔を出す、遥夏がいて欲しかった。  どうしたんだ。  俺と遥夏は幼なじみのただの仲良しだろう? 「高い所は苦手だったようだな。秋永玲」 「誰だ? びっくりするじゃないか」  低い男の声だ。  かん高いコロムンさんとは違うようだな。 「我は、暗黒世界制樹(あんこくせかいせいじゅ)なり」 「何だ。暗黒世界なんとかさん」  俺の耳に直接話し掛けてくる。  頭の中のラジオのようだ。 「もう一度しか言わない。よく聞くんだ。我は、暗黒世界制樹なり」 「何者なんだ。暗黒世界制樹とは」  きっと、スピーカーでもあるのだと思って、辺りを見回した。 「この世界を統べる者だ。コロムン、汝らも我に従うのだよ」 「コロムンさんとは、あのかん高い声で叫ぶ小さな生き物なのか?」  忍者罠から声が聞こえたな。     
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