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初めて俺が剣を握ったのはまだ鎧も着れないクソ生意気なガキだった。
あの頃はその日を生き抜くだけで精一杯だった。
自分の未来なんて考えたこともなかったね。
「騎士に興味はないか?」
それなのにどこで聞いたのか知らなねぇが、どっかの何とかってデカイ国の王様が素性を知らないガキを騎士にしたいとか言ってきやがった。
さすがに頭の悪い俺でも疑ったさ。何か企んでいるんじゃないかってね。
だけどちょっと考えたらさ、別に失うものなんて何もないじゃないか。
そのことに気付いた瞬間、すぐに俺は返事を出した。
だけど、問題は騎士になってからだ。
当然、騎士見習いの俺は毎日、毎日、来る日も来る日も稽古、稽古。
殺し合いがない稽古なんて、正直もの足りなかった。
どっかの貴族のご子息様、国で一番の力自慢や知恵者、どいつもこいつも、みんな弱かった。
「自分が一番強いと勘違いはするなよ」
そうやって説教する大人の騎士団長様には、経験の差か勝てなかった。
でもすぐに一撃を与えられるくらいには俺も成長した。
騎士団で一番の強者になれると、思ってた矢先お前が入団してきた。
最初会った時は女が入団したかと勘違いしたさ。
今となっては言い訳にしかならないが、初めての手合わせで俺はお前の見た目に引っかかって手を抜いた。
「見くびられたものだな」
結果は俺の惨敗。
騎士団長と数回はやり取りできる俺が一発で転がされた。
あれ以来、稽古が終わってからお前と試合をするのが俺の日課になった。
ガキから一端の大人になってからもずっと続いたが、お前に勝ったことは一度もなかったな。
もう少しで何かが掴めそうだって時に、あの大戦の話が飛び込んできたっけな。
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